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映画の平均

公開日: : 映画

私は映画が好きだ。もう何年も前のことになるが、封切られたばかりの新作を色々な映画館を梯子しながら観ていた。一日5本観ることもざらだった。それほど愛した映画だが最近は仕事などを理由に遠ざかっていて観ても年間数本くらい。しかし、映画への愛がなくなったわけではない。映画の今を見極めるべく、映画の上映本数や興行収入、上映時間等の平均に迫ってみる。

映画フィルム

映画の公開本数-史上最高の公開本数!

私事で恐縮だが、私が映画にはまっていた頃の映画の選び方は非常に単純だった。その週末から公開が始まっていて、ディズニー、邦画、中国映画、韓国映画、ラブコメ以外は原則観る。もちろん例外はあったが何しろ映画というのは観るのに時間がかかるので、優先順位を付けざるを得ず、それでこのようなルールにしたわけだ。

その当時年間の鑑賞本数は、週末ごとに大体3~5本で月20本切るくらい、年間だと200本前後だったと思う。しかし当時、これだけ観ても、まだ公開される映画の3分の1も届かないくらいという感じがしていた。実際は年間何本くらい日本で公開されているのだろうか。さっそく調べてみた。

一般社団法人日本映画製作者連盟が公開している資料によると、年間の映画公開本数は2000年代に入ってからだと約766本が平均のようだ。最も古い1955年からの平均は約663本。なかなか私の感覚は近かったようだ。

映画の年間公開本数(単位:本)
映画の年間公開本数

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

最も公開本数が少なかったのは1983年の498本。しかし、そこからはデコボコしながらも増え続け、2013年には1,117本と1,000本の大台を超えている。30年で二倍に増えたというのもなかなかの増加ペースだが、2000年後半からの増え方は異常なペースに見える。

映画の興行収入-しかし儲かっていいるかというと・・・

映画の公開本数は増えているようだが、映画産業の景気がいいという話はあまり聞かない。一般の会社でいうと売り上げにあたる興行収入はどうなっているのだろうか。

映画の年間興行収入-全体では儲かっている!

これも同じ調査で把握することができる。するとどうだろう、興行収入も基本的には右肩上がりで増加している。映画の興行収入は1972年76,971百万円を境に一気に増加し始め、2010年に最高220,737百万円を記録している。なんと三倍近い差だ。

映画の年間合計興行収入(単位:百万円)
映画の年間興行収入

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

映画の入場者数と料金-どんどん高く!

しかし、どうも納得いかない。以前よく通っていた映画館はここ数年で軒並み潰れていっている。そこで入場者員数と平均料金に目を向けてみた。

映画の入場者数と平均料金の推移(単位:円(左軸)、千人(右軸))
映画の平均料金と年間入場者数

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

入場者数は、1972年まで急激に減少したあと、ほぼ横ばいから非常に緩やかなペースで減少している。一方料金はというと、1960年代から急速に上昇しはじめており、2010年に最大1,266円となっている。なるほど入場者数の減少を、料金を上げることによって補ってきたのだ。最近流行りの3D映画なんてのはまさに単価の維持に貢献していることだろう。

なお、入場者数と料金の変化は、1964年の東京オリンピックによってテレビが一般家庭に普及したことによる影響のようだ。

それにしても映画の平均入場料が最大の時でも1,266円というのは意外なほど安い。大人料金が1,800円、大人の割引料金や子供料金が1,000円とすると、半分以上が割引料金で入場しているということになる。

映画作品の平均興行収入-それでも苦しい製作側の台所

単体の映画作品の平均興行収入ははというと、1983年が最大で374百万円、2013年は174百万円と、なんと1974年の200百万円よりも低い水準になっている。

映画作品ごとの平均興行収入(単位:百万円)
映画作品の平均興行収入

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

日本の歴代最高興行収入は宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)で304億円だ。平均興行収入174百万円(1.7億円)その差は179倍の超格差社会。大ヒット作品の陰にわずか数億円の興行収入で消えていく映画もあるという厳しい現実が見える。それにしてもここまで作品あたりの収入が落ち込んでしまうと、薄利多売とならざるを得ず、映画の製作に関連する会社も相当厳しいだろう。

参考までだが、作品あたりの平均入場者数は2013年に140千人と減少し続けている。

映画作品ごとの平均入場者数(単位:千人)
映画作品の平均入場者数

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

映画館(スクリーン)あたりの興行収入-単館系淘汰の理由

次に映画館(スクリーン)ごとの興行収入を見てみる。ピークは1998年の97百万円、2013年は59百万円となっている。2013年の水準は1976年と全く同じだ。こちらも相当厳しい現状がうかがえる。

映画館(スクリーン)ごとの平均年間興行収入(単位:百万円)
映画館の平均興行収入

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

これだけスクリーンあたりの収入が減ってしまうと、スクリーンが数えるほどしかないミニシアターが潰れ、たくさんのスクリーンを持ち効率的な運営ができるシネコンにとって変わられてしまうのもうなづける。

こちらも参考までだが、映画館(スクリーン)あたりの平均入場者数は2013年に47千人と減少し続けている。

映画館(スクリーン)ごとの平均年間入場者数(単位:千人)
映画館の平均入場者数

出典:一般社団法人日本映画製作者連盟『過去データ一覧表』より作成

映画の上映時間-何分だと思いますか?

最後に映画の上映時間を見てみよう。この分析は映画ランキングドットコムさんがまとめられていた日本国内年間総合興行収入ランキングに基づいて、上位10位(一部10位までない年もある)までの作品についてYahoo映画で拾える上映時間(拾えない場合はWikipedia等を活用)に基づいて作成した。

映画作品の平均上映時間(単位:分)
映画作品の平均上映時間

出典:映画ランキングドットコム、Yahoo映画、Wikipediaなどから作成

ヒット映画の上映時間は90年代前半までは概ね120分で推移してきたが、90年代後半から00年代前半にかけて上映時間が延び、だいたい130分前後が平均となった。その後00年代後半に差し掛かると今度は逆に上映時間が徐々に短くなっており、2013年は112分が平均となっている。

上映時間が短い傾向がある映画ジャンルといえばアニメやコメディ、アクションが思い当たるだろう。現に2013年の上位作品は以下のようになっており、ほとんどアニメとコメディだ。

日本国内 2013年 年間総合興行収入ランキング(上位10作品)
  • 「風立ちぬ」(126分、アニメ)
  • 「モンスターズ・ユニバーシティ」(122分、アニメ)
  • 「テッド」(106分、コメディ)
  • 「ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」(104分、アニメ)
  • 「名探偵コナン 絶海の探偵」(110分、アニメ)
  • 「謎解きはディナーのあとで」(121分、コメディ)
  • 「真夏の方程式」(129分、ミステリー・サスペンス)
  • ポケットモンスターベストウイッシュ 神速のゲノセクトミュウツー覚醒(-分、アニメ)
  • ドラゴンボールZ 神と神(85分、アニメ)
  • シュガー・ラッシュ(101分、アニメ)

出典:映画ランキングドットコム、Yahoo映画より作成

上映時間が短い作品が興行収入の上位に入りやすい傾向の原因は何だろうか。テレビの高画質化やBlu-rayの普及によって、忙しい大人は上映時間に縛られる映画を観ることが減ってしまったのだろうか。あるいは、収益が苦しい映画製作サイドがなるべく製作費用を抑えようとして短い作品作っているのか。はたまた、映画館が効率の観点から短い映画を選んでいるのか。。。

いずれにしても、製作側、消費側両方とも不幸なことではないだろうか。

まとめ-お気楽も良いけれど

シネコンで上映され、中身はアニメかコメディかアクションで、上映時間は2時間を切り、満席になることもあまりなく、観客の半数は割引価格で観に来ている大人か子供。作品本数は増えているでの少しでも人気に陰りがでたら次々と姿を消していく。それが今の映画の平均的な姿のようだ。

私は映画が好きだ。アニメやコメディやアクション映画なんて少し疲れた時にはもってこいだと思う。でも、こんなところに映画館が!?と思うような雑居ビルでひっそりと上映されている少し危ない雰囲気のある映画のほうがどちらかといえば好きだ。しかし、今回の結果からは、そういうあまり儲からない映画は今後どんどん減ってしまう未来しか見えない。もっと映画を!

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